相続放棄と遺産分割の違い
何回かに分けて相続放棄についてお話ししたいと思います。
法律用語としての「相続放棄」は、家庭裁判所に申述することによって相続放棄をすることができます。
前提として、「遺産分割」の話をさせてください。
「遺産分割」は、遺産を相続人間で好きなように分割することができます。例えば不動産は長男のAさん、預金は二男のBさん、証券は三男のCさんと言う具合にです。当然、長男のAさんが遺産の全てを相続し、Bさん、Cさんは相続分ゼロという遺産分割もできます。
そこで、疑問が出てきます。Bさん、Cさんの相続分がゼロとなる遺産分割協議ができるなら、わざわざ家庭裁判所に行って、相続放棄を申述する人がいるのは何故でしょうか?
遺産分割をできるのは、プラスの財産だけだからです。
というよりも、マイナスの財産(いわゆる借金)を遺産分割をしたとしても、債権者(銀行などの貸主)には、効力が生じないからです。
例えば、前述のAさんBさんCさんの遺産分割協議で、Aさんが被相続人のプラスの遺産のすべてを相続し、Bさんが借金の全てを相続、Cさんが相続無し、と決めたとします。もしも、Bさんが何らかの都合で資力のない人だったら、貸主は非常に困ります。
ここに遺産分割の落とし穴があると言えるでしょう。
遺産分割協議で何も財産を貰っていなくても、もし、被相続人が債務を遺していたら・・・何も財産を相続していない人も弁済する義務があるのです。
その点、家庭裁判所に申述する相続放棄は、債務も含めすべてが相続分ゼロです。
相続放棄の効力は、相続放棄した人は初めから相続人でなかったことになりますから、被相続人の遺産が債務超過などの場合は、実効性のある手続きです。
ですが、どんな手続きでも落とし穴はあります。
長くなってしまったので、この続きは、また近いうちに書きますね。